富士山とモニュメント

平和を学ぶ講座2015 第6回

「祖国はありや 土着せしめて生活を営む」

2015.10.4(「平和講座」part5ニュース2015 No.6より)

橋口さんが満州で棄民された開拓民の過酷な実態を詳述

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 10月4日の「平和講座」第6回は、満蒙開拓青少年義勇軍の体験者橋口傑さんが「祖国はありや 土着せしめて生活を営む」の演題で、自身の旧満州での体験、敗戦後の開拓民との過酷な逃避行の実態、さらには終戦時、日本軍が残留した日本人を現地に土着させて生活させようとした意図についても解説。「地獄の苦しみの中で残留させられた開拓民は日本政府に『棄民』された」と語り、当時の凄惨な状況をありのままに伝えました。

【概要】

 橋口さんはまず、「開拓とは本来、荒地を開墾することだが、満州の開拓団のはじめは、すでに中国人が耕していた土地を取り上げて自分たちの土地にし、翌年から収穫を得ていた。関東軍は、入植した場合中国人からの抵抗があると見込み、弥栄などの開拓団は完全武装していた。つまり、いくら殺してもいいということだった」と語り、開拓団の女性たちの射撃訓練写真などを示し、「土地を取り上げられた人たちは抗日運動をはじめ、開拓団に犠牲者が出るようになり、安全を保つためには武装して戦わなければならなくなった」と述べました。

 一方で、橋口さんがいた勃利(ボツリ)では広大な荒地をトラクターで開墾しており、1年目は収穫が無く、3年後には大量の大豆を収穫したことなど、現地での暮らしの様子なども紹介しました。しかし、土地を奪取する日本人は中国人にとって攻撃の対象であり、ソ連参戦後、ソ連軍の素早い進撃が始まると、中国人の暴動が起り、開拓団は避難を余儀なくされました。橋口さんもソ連空軍の機銃掃射を受けるなど、そこから開拓団と共に過酷な逃避行が始まりました。橋口さんは「前日まで勃利にいた関東軍は一斉にいなくなっていた。本来軍隊は国民を守るはずだが、日本の軍隊は、住民を守らずにいなくなった」と語り、更に「大本営は敗戦直後『日本人を現地に土着せしめる』という方針を打ち出しており、その理由は『もし再度中国に侵攻した場合は、この日本人たちが協力してくれるだろう』という思惑があった。これは満州にいた日本人たちを棄民することだ。130万人の日本人を現地に捨てるという政策だ」と語気を強めました。

 後半では、橋口さんが終戦後半年の現地に留まり、開拓団のその後を調査して回り、開拓団の跡地に開拓民の多数の白骨体が残され、残留させられた孤児たちや女性らが中国人の妻になって日本語を忘れて暮らす状況などを目の当たりにしたこと、更には八路軍に拘束され8年間軍の医療関係の仕事をしたことなど、数奇な体験を語りました。

 最後に質問を受けて、「戦争は、何回行っても足がすくみ、これほど怖いものはない。戦争は絶対にやってはいけないと思っている」と述べました。

アンケートの感想・ご意見(2015.10.4)

  • 橋口さんのお話は何回も聞いていますが、何回聞いても初めてのことのようでとてもよくわかりました。橋口さんのような体験をされた方がもっともっと話をしてくれることを望みます。中国の地名も漢字でちゃんと書かれて凄いと思いました。学校などへの話もずっと続けておられて頭が下がります。軍は市民を守ってくれないとの話は、とても分かりやすく胸にずしんときました。(60代・女)
  • 日本は満州に侵略し、傀儡国家をつくり、゛五族協和゛の誤まった国策で満蒙開拓団を送りだした。終戦になったら、゛土着せしむる゛方針で、多くの犠牲者を出した。日本政府の加害責任は、謝っても謝りつくせないほど大きい。(60代・男)
  • 今の安倍政権が危ない方向へ突進していると危機感があります。なんとしても止めなければ、あの戦時中の体験、二度とごめんです。破壊以外の何物でもないですよね。(80代・女)
  • 橋口さんのような実体験者の話を初めて聞けて、とても感動しました。つらい体験のことも正直に話しておられて、何十年経っても戦争の残した心の傷は癒えることがないのかなと思いました。(50代・女)
  • 実際の体験談だけに、説得力があった。もっと続きの話を聞きたい(橋口さんのお元気なうちに)(70代・男)
  • 貴重な体験を後世に伝えて行きたい。今後もこの平和を学ぶ講座をやってほしいです。(70代・男)
  • これまで何度か体験談をお聞きしましたが、いろいろな疑問が少しはっきりしました。まだまだ想像できない、判らないことも多いと認識しています。何度でもお聞きして、悲惨で愚かな戦争を二度と起こさないように身につけて語り継いでいきたいと強く思っております。病後の身で、長時間の講演本当にありがとうございました。どうぞこれからもお体大切に、私たち戦後生まれの生意気な世代のご指導よろしくお願い致します。耳を覆いたくなるようなお話まで…冷や汗が出ました。肉声で初めて聞きました。言葉になりません。(60代・女)
  • 棄民について、日本人としてがっかりした。(60代・男)
  • まだまだ話を聞きたい。とても聞き易い話でした。戦争反対。(80代・女)
  • 何回か聞いた話でしたが、話の内容が良く理解できた。同じ話の様でも、微妙に変わる内容もあるので、同じような話でも繰り返し聞くことが必要だと思いました。(90代・男)
  • 橋口さんのお話よくわかりました。すばらしいです。戦争が現実なんだと実感しました。この活動をずっと続けてください。(60代・女)
  • 戦争には正義も名目も無いことは明白であります。一度突入したら止める事は大変であることは歴史が証明しています。二度と起こしてはいけません。橋口さんの話はいつも事実に基づく話で、何度聞いてもビックリして聞き入ってしまいます。質問に答えていただき申し訳ありません。でもどうしても聞きたかったです)(60代・男)
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